そばと日本文化。江戸時代から現代へ育まれた豊かな文化

そばは単なる食事としてだけでなく、
「縁起のいい食べ物」
として日本文化と密接に関係してきました。
今回はそんなそばの文化的側面にクローズアップし、魅力を探っていきます。
江戸時代に開花したそば
日本では縄文時代からそばの栽培が行われ、雑穀類と合わせて食べられていました。
鎌倉時代にはそば粉を練って団子状にした「そばがき」が生まれ、江戸時代にそばがきを切って麺状にする「そば切り」へ。
現代へと受け継がれるそばへと発展していきました。
江戸っ子には”粋”を重んじる文化が根付いており、そばも粋に食べるのがよしとされていたようです。
・そばつゆにはほんの少しだけつけて、そば本来の風味を味わうのがよし!
・勢いよくずずっとすすり、あまり噛まずに飲み込んでの喉越しを楽しむのがよし!
・そば湯までしっかり楽しむがよし!
などがそばの粋な食べ方だとされていたよう。
「かけそばは江戸っ子の気質?童話「一杯のかけそば」にも迫る」はこちら
また、そばは江戸だけでなく日本全国的にも独自の進化を遂げ、さまざまな形態が生まれていきます。
その代表格が「日本三大そば」といわれる出雲そば(島根県)、戸隠そば(長野県)、わんこそば(岩手県)。
割子そばと釜揚げそばの2つの食べ方がある出雲そば、ぼっち盛りという特殊な盛り方をする戸隠そば、ひと口分のそばを器に盛りリズムよく食べていくわんこそば。いずれも特徴的な食べ方であり、日本文化の多様性が垣間見られます。
そばは縁起のいい食べ物
そばを食べる文化といえば、「年越しそば」や「引っ越しそば」。
昔から縁起のいい食べ物といわれ、さまざまな節目でそばを食べる文化が根付いていきました。
年越しそばが根付いたのには諸説あり、そば切りとして細く長く伸びることから細く長く生きられるようにと願ったり、切れやすいことから苦労や災いを年末に切り捨てたり、またかつて金細工師が散らばった金粉を集めるのにそば粉を練ったものを使ったことから金運アップがなぞらえられたり。
いろいろな謂れはあるものの、現代では多くの人が理由に囚われすぎることなく、伝統文化として12月31日に年越しそばを楽しんでいます。
一方引っ越しそばは、江戸時代末期頃に始まった文化とされています。
引っ越した際に家主がご近所へ
「おそばに来ました。末長くお付き合いください」
という気持ちを込めてそばを贈ったことに由来するとか。
江戸っ子らしいシャレの利いた風習だったようですが、こちらも現代にも受け継がれ、引っ越しの際にはそばを食べたり贈ったりするご家庭が多いようです。
そのほか、ひな祭りにそばを食べる「雛そば」や、家を新築する際の建前においてそばを振る舞う「棟上げそば」なども。
節目節目でそばが食べられてきた歴史があり、日本文化とそばの根強い結びつきが感じられます。
そばをすする音は不快
近年、外国から日本への観光客が増えるに従って、日本独自の「そばをすすって食べる」という文化が「ヌードルハラスメント」や「音ハラ」に当たるとしてSNS等で話題になったこともあります。
「隣でズルズルすすって食べている音が不快だった」などという投稿には、多くのリツートやいいねが集まり、賛否両論が巻き起こっていました。
ただ、日本人をはじめ外国人からも「日本の伝統的な文化なのだから、観光客に合わせて変容させる必要はない」という声も多く挙がっています。
文化の多様性を認めつつ、お互いに気遣ったり理解したりしながら、思い思いにそばを楽しみたいものですね。